PROLOGUE
セキュリティへの招待状

🏁 本章の狙い

「セキュリティって、難しそうだし面倒くさい…」
そう思っていませんか? 実は、セキュリティは「あなたの大切なものを守るための物語」です。
この章では、細かい技術論は抜きにして、以下の3点を直感的に理解することを目標にします。

2025年、世界は変わりました。
アサヒグループ、KADOKAWA、アスクル…。名だたる大企業が次々とサイバー攻撃に倒れ、私たちの生活にも影響が出始めました。
攻撃者は「AI」という魔法の杖を手に入れ、私たちの心の隙を狙っています。
さあ、デジタルの世界で生き残るための「守りの極意」を学びに行きましょう。

1. なぜ今、セキュリティなのか?(背景と歴史)

インターネットが生まれた頃、そこは性善説に基づいた平和な楽園でした。
しかし、時代と共に「悪意」が入り込み、現在では「デジタル空間の戦場」と化しています。
その変遷を少し振り返ってみましょう。

🕰️ コラム:ハッカーの歴史

[1990年代:愉快犯の時代]
昔のハッカーは「自分の技術を見せびらかしたい」というオタクたちでした。
ホームページを書き換えて「俺がハッキングしてやったぜ!」と自慢するのが目的で、実害は限定的でした。


[2000年代:金銭目的へ]
インターネットで買い物ができるようになると、クレジットカード情報を盗む「サイバー犯罪者」が現れました。
ここからセキュリティは「ビジネス」になりました。


[2025年現在:国家・組織犯罪へ]
今はもう、パーカーを着た個人のハッカーはいません。
攻撃者は「組織」です。会社のように出勤し、AIツールを使いこなし、分業体制で攻撃を仕掛けてきます。
中には国家が支援する部隊もあり、その目的は金銭だけでなく「社会の混乱」や「インフラ破壊」にまで及んでいます。

2. 情報セキュリティの定義「CIA」

「セキュリティ対策」と一言で言いますが、具体的に何を守れば「安全」と言えるのでしょうか?
専門家は、以下の3つの要素(CIA)が揃っている状態を「安全」と定義しています。

🏦

たとえ話:銀行の貸金庫

情報を「貸金庫に入れた重要書類」に例えてみましょう。

C 機密性 (Confidentiality)

「泥棒に見られない」
許可された人(鍵を持った人)だけが開けられる状態。
(例:パスワード、暗号化)

I 完全性 (Integrity)

「書き換えられない」
書類の数字が勝手に改ざんされたり、汚されたりしていない状態。
(例:デジタル署名)

A 可用性 (Availability)

「いつでも使える」
銀行が停電したり、鍵が錆びて開かなくなったりせず、必要な時にすぐ取り出せる状態。
(例:バックアップ、予備電源)

この3つのうち、どれか1つでも欠けると「セキュリティ事故(インシデント)」になります。
例えば、「ランサムウェア」はファイルを暗号化して使えなくするので、「可用性(A)」への攻撃と言えます。

3. 敵を知る:「脆弱性」と「脅威」

セキュリティの話で必ず出てくる「脆弱性(ぜいじゃくせい)」と「脅威」。
この2つの関係を理解することが、対策の第一歩です。

この2つが揃うと事件が起きる

🪟 脆弱性
(弱点)
😈 脅威
(攻撃者)
💥 被害
(インシデント)
1. 脆弱性 (Vulnerability)

「鍵のかかっていない窓」のこと。
OSの不具合、設定ミス、そして「パスワードを使い回す」といった人間の油断もここに含まれます。

2. 脅威 (Threat)

「泥棒・空き巣」のこと。
ウイルス、ハッカー、あるいは地震や火事などの災害も脅威に含まれます。
彼らは常に街(ネット)をうろつき、開いている窓を探しています。

🛡️ ここがポイント!

4. これから学ぶこと

この『ULTIMATE SECURITY BIBLE』では、以下の3つのステップで、あなたを「守れる人」へと導きます。

👿 第1章:脅威の全貌 (Attack)

敵の手口を知らなければ、守ることはできません。ウイルスから最新のAI攻撃まで、敵の武器庫を覗きに行きます。

🛡️ 第2章:鉄壁の防御術 (Defense)

パスワードの作り方から、最新の「ゼロトラスト」戦略、そしてAIを見破る人間力まで、具体的な防御策を伝授します。

⚖️ 第3章:組織とガバナンス (Governance)

一人では守りきれません。組織としてのルール作り、内部不正の防ぎ方、そして経営者が知るべき責任について学びます。

準備はいいですか?
まずは第1章で、深淵なる「脅威」の世界を覗いてみましょう。